OURS感想

 2007 4月号


泣いたり暴れたり駄々をこねたり
落ち込んだりするんじゃないかと思っていたのですが
自分でも驚くくらい穏やかな気持ちです。
巻末の次号予告のページを眺めて、
なんだかじーんとしてしまった。
本当に終わるんだなあ。
なんだか卒業式の直前みたいな、明るい寂しさと静けさ。


******


ヴァッシュは変わりませんでした。
もう言葉を尽くしたとも思えるのに
それでもまだぎりぎりまで
語りかけるのがやっぱり彼らしい。
ナイブズは想像以上にボロボロでしたね、
身体の再構築が精一杯。
髪もほとんど黒に染まってしまった。
最後の力で形作った刃が
ヴァッシュの銃と交錯する緊迫感。
世界中でたった一人になっても
自分が選んだ道を誇る。
その悲鳴のような叫びに、
ようやくナイブズの心に触れた気がしました。
過去と未来の自分が許さない…
もう引き返せない。
人類の抹殺を願いながらも
その罪を思う夜があったんだろうか。
ヴァッシュがコルナゴの教会で
この罪の重さから解放されることなど
自分自身が許さないと言っていたのが重なって、
切なくなってしまうのでした。
いまさら後悔なんて許されない。
ヴァッシュに殺せと、往く場所をくれと訴えるナイブズの
孤独の深さをあらためて思います。
2人の本当に最後の衝突。
美しい!そしてどうしようもなくかっこいい。
触れるものすべて切り裂くナイフと
核心を撃ちぬく銃のせめぎあい。
息が詰まるような見開きの連続に引き込まれて、
闘いの決着が垣間見えた
心が冷えるような鳥肌が立つようなその瞬間、
レムの言葉がこんなかたちで甦る。

ナイブズをひとりにしないで。

ヴァッシュの銃が空を仰いで、
(またFIFTH_MOON?と一瞬思ってしまったけど)
彼の弾丸が撃ち抜いたのは
クロニカでした。
正直もう彼女のことノーカウントだったもんだから
ええええ!?
そりゃびっくりです。
クロニカはクロニカなりの理論で動くのだ。
ものすごい執念と気迫。
ドミナの仇を討ちたいとかの気持ちもあったら
個人的には嬉しいところ。
被弾して墜落する機体が迫ってくるなか、
ヴァッシュはナイブスを抱えて翼を広げます。
と、飛べたのか!?!?
衝撃!息するの忘れそうになりました。
ナイブズも唖然としてたけどな。
そんな身体で、そんな無茶を。
ヴァッシュの残された金髪はすぐに黒化し、
翼は力を失って、二人は墜ちていく。
ヴァッシュの身体をしっかりと掴むナイブズ、
その身体から刃の翼が羽ばたく。
飛翔する白と黒の対の翼。
吃驚したのと、美しいのと、ほっとしたのとで
もう胸がぶるぶるしてどうしようもない、このシーン。

このくだりで気がかりなのは、
レムの言葉が聞こえてこなかったら、
クロニカが介入していなかったら、
ヴァッシュはどうしていたのかということ。

レムの最後の言葉については
永遠の謎というか、
こちら側に託されたものだと思っていたのですが、
こうして明かされてみると
原作の力強いレムにふさわしいと思えてくる。
「孤独にしないで」という言葉が
撃たないという選択に直結するとは思いません。
(撃っても孤独にしない方法があるから…あとで触れますけど)
レムの言葉が直接、彼をひきとめたのではないと思うんです。
レムがこう言ったから、レムが命を賭けたから。
ヴァッシュはそう言うけれど、
最後は自分で選んできました。
レムの記憶やレムへの想いが
ヴァッシュの背中を押していることは事実で、
でも150年分、自分で歩いて学んで知って覚えて、
感じて悩んで考えたことも沢山沢山あって。
極限のなかで、ふいにレムの言葉が響いた。
それを僅かなきっかけにして、
ヴァッシュのなかに閃くように生まれたものが
あったんじゃないのかな。
最後のギリギリのその瞬間に、
人間だけでなく、ナイブズのことも知らなければいけないと。
彼の苦しみ、孤独、悲鳴、怒り、憤り、哀しみ、葛藤。
それを一人で負っているのだと、
孤独にさせてしまっているのだと、
ヴァッシュは気がついたのではないでしょうか。
二人で背負うべきなのだと。
だからこそ思いとどまったような気がします。
レムの言葉は、
撃つか撃たないかではなくて、
ナイブズに向きあう気持ちを
ヴァッシュに思い出させたんじゃないかなあ。

それが前提にあるからこそ、
クロニカの攻撃があってもなくても、
自分からはナイブズを撃たなかったと思っています。
ナイブズだけを一人で往かせない、孤独にはさせない。
でもそこには、二人で死ぬのならいいという
裏の意味もあります。
前哨戦のときに、この星に俺達は必要ない、と
ヴァッシュは言いました。
だから、自らナイブズを殺さなくても、
もしくは殺してあげたとしても、
クロニカの攻撃を二人で甘んじて受けて
消滅するという選択肢もありえたと思うんです。
うわひどい。
でも、共に死を選ぶ、そういう優しさだってあると思う。
けれどもヴァッシュはナイブスを連れて逃げようとした。
すぐに力尽きてしまったけれど。
死よりも生きるほうが辛い道もある。
それでもナイブズとともにその罪を負いたいと
思ったんじゃないのかなあ。
甘ちゃんです。馬鹿です。
でもとんでもなく好きです、そういうヴァッシュが。
そして、死ぬことを望んでいたナイブズが
ヴァッシュとともにそのまま墜ちて消えることではなく
一緒に飛び続けることを選んだのも
ヴァッシュのなにかが伝わったからこそなのだと
思えてしかたない。
ヴァッシュはどうしようもなく馬鹿なんだけど、
そんな馬鹿だからこそナイブズに何かが伝わった。
ナイブズはヴァッシュに執着していたし
唯一の兄弟なんだから当然かもしれないけれど、
ヴァッシュが最後の最後で
ナイブズのために命を賭けたからこそ
ナイブスの心に目覚めたものがあると思うのです。

ヴァッシュとナイブズの原点、絆、運命が
この物語を貫いているんだ。
ああ、いまさらなんだけど、
クロニカ姐さんの怒りも意地もわかるけど、
最後の最後は兄弟2人きりで決めさせてあげたかった。
それだけは残念なのでした。

で、リヴィオです。
攻撃を続けようとするクロニカを食い止める、
こんなに大きな役割を果たすとは。
ヴァッシュに引き金をひかせたのが最後だなんて
あまりにもさみしいと思っていたから、本当によかった。
よくやった坊主!頭撫でまくりたい!
彼の言う「ノーマンズランド」が
この星の名前、呼び名なのでしょうか。
荒野、未開の地、中立地帯…どの意味でも納得できます。
(砂に関する名前だろうとすっかり思い込んでました)
ここは地球じゃない。
人が生きるには厳しく過酷すぎる環境で
その負の点ばかり考えていたけれども、
地球生まれの人類がこれまで犯してきた過ちを
やり直せる、白紙に戻せる可能性がある
まっさらな土地でもあるのだと
いまさら(本当にいまさらながら)思ったりしました。
だからあの星の住民が好きなのかなあ。
地球とは違うシビアな環境のなかで
生き延びてきた人類というかっこよさというか…
NEW_TYPEとか超人類とかではなく、
自分が持っている普通の身体一つだけで適応しようとする、
「変われる」強さに惹かれるのです。
あれがないこれがないだからできないと言うんじゃなくて、
あるものをまず全部使いきって変わりたい!
っていう気持ちになるのでした。
あの星の住民は、
大墜落を呪われた運命だと思うだろうし
辛い現実から救われたいと願っているのだろうけれども、
でもでも、どうか
ノーマンズランド生まれを誇ってほしいと思うのでした。

で、リヴィオです。(戻る)
いつから待機していたのかな、
墜落したクロニカ機を追いかけてきたのかな。
自分にもなにかできないだろうかと、
戦闘の動向を固唾をのんで見守っていたんだろうか。
彼女を封じるために撃ったのが
ウルフウッドの形見の銃だってこと、
嬉しいなあと本当に心から思う。
ウルフウッドが生きてたらきっとそうしたはずだから、という
気持ちが全くないかといえば
難しいところなんだけど、
あの過去があって、あの人に命を託されて、
やり直したい強くなりたいあの人みたいになりたいと願って
ただただ走ったリヴィオだからこそ、
今回のフォローができたんじゃないかな。
ここは他の誰でも、ミリメリでもだめなんだー。
誰が撃ってもいい銃じゃない、
リヴィオにしか託されなかった銃なんです。
そして、僕たちを信じてほしいという言葉は
ウルフウッドではなくて
リヴィオにしか言えなかった台詞だと思うんです。
一人の男として、リヴィオを認めたいな。
もうチンカス君でも泣き虫リヴィオでもないよ。
かっこよかった。

アニメの再終話では、
ウルフウッドの形見のパニッシャーは
ヴァッシュによってその引き金がひかれました。
ヴァッシュ自身の戦いのために。
原作とは異なるものだとわかってはいても
ヴァッシュの最後の戦いには
ウルフウッドが添っていてくれるんだと思いこんでいました。
でも、ヴァッシュの戦いは最後までヴァッシュのものだった。
ウルフウッドの銃の引き金をひいたのはリヴィオだった。
この展開はやはり寂しいんじゃないかと
自分の心のなかを何度も探ってみた。
でも、そこに寂しさを感じていないみたいなんです。
静かに受け止めている感じがする。
ヴァッシュは自分の戦いを自分の手で終わらせ、
ウルフウッドは自分が守ったものを見届けた。
それが嬉しいのかもしれません。
それぞれがそれぞれの戦いに一人ずつ立ち向かっている、
そういう関係の二人が、
予想外だったけれど、嬉しいのだと思います。
いや、もしかすると、胸がいっぱいになって
満足しきっちゃってるのかもしれないですけど。
だって、こんな風に姿を見せてくれるなんて
思ってもいなかったから。
そのセリフ一つで
うわあっと背筋に震えがきて、
その姿を見たら
もう喉の奥から涙の気配がしてきた。
その笑顔は二度と見られないかもしれないと思ってたのに。
リヴィオに感情移入しちゃって、
嬉しくて、じーんときてしまって、
ありがとうございますと言いたくなってしまいました。

哀しい鳥が朝焼けの空に消えていくラスト。
それを見送る、ひとりひとり。
長い最後の一日が明けたんですね。
連載はあと一回のみ。
何をどこまで描くのでしょうか。
この星でヒトは、プラントは、どうやって生きていくのか。
一般プラントと自律プラント、
地球とノーマンズランドはどのように影響を与えあうのか。
そしてなにより、あの兄弟はどうなるのか。
ナイブズに力が僅かに残っていたら、
二人で分けあってなんとか生き延びてくれないかなあ。
やがてほとぼりが冷めたら、
静かに寄りそってきてほしいよ。
もういっそ完全に行方がわからないまま、
伝説になってしまうのでもいい。
二人が飛び去った方角に大きなジオプラントが出現、
緑あふれるその中心に羽根の形をした大木があって、
こんなかたちでミリイとの約束が守られる…みたいな
妄想でイメージトレーニングしておくけど。
(感動していても妄想力だけは衰えない悲しいサガ)
(ここまで最悪のラインを考えておけば大丈夫なはず!)

最終回というよりもエピローグという感じだからこそ
こんなに落ち着いていられるのかもしれない。
OURSを買うのも、連載を読むのも、連載感想を綴るのも、
もう最後なんだなあ。
いまはただ心静かに発売日を待ちたいです。


******


ウルフウッドの姿はリヴィオだけに見えた、それでいいと思います。
ヴァッシュは多分、彼の姿を見ることはないだろう。
ウルフウッドもきっとヴァッシュに言葉をかけることはない。
何度も読み返して、こうして感想を書きおえてみて、
いまはそう思っています。