OURS感想

 2006 11月号 [2nd]


「不殺」って、どういうポリシーだったのかなと思う。

そこにレムの存在があるということは
間違いないと思います。
彼女が命を賭けて救った人間には、
彼女自身の命が繋がっている。
その人間が死ねば、彼女は二度死ぬことになる。
モネヴを撃つ寸前に
レムを想って踏みとどまったのはとても象徴的なシーンです。
そして、過去の過ちがあったとしてもきっとやり直せる、
未来への切符はいつも白紙だという彼女の言葉。
それがあるからこそヴァッシュは人間の愚かさを知っても
立ち直るチャンスを信じて待つことができるし、
その機会を奪うことをしないのです。

レムが「不殺」の大きな理由であることは明白だけれど、
でも、彼の信条は
レムの記憶、ただそれだけの上に
成り立っているわけではないと思う。

大墜落で多くの命が奪われ
生き残った人間も疲弊しきっている現状に
責任や罪悪感を感じていることから
人に裏切られ踏みにじられても許してしまって、
人間を見守っていくうちに
どこまでも「身内」のようなスタンスになり
銃を向けられても「敵」とは思えなくなって、
LOST_JULYの記憶が戻ることで
人間は温かくて優しい
そして失った命は決して戻らないと思い知って…

そうしたかたちで
ヴァッシュ自身が育てていった
人を撃ちたくない、殺したくないという想いがあるのでしょう。
「銃で撃てば人は死ぬ」
という先月号の言葉は、彼自身の実感だと思います。
(アニメ版は「レムの命だから」という理由以外は
(はっきり伝わってこなかった気がする。

失われる命の重さ、
取り返しがつかないということ、
過ちを犯してもまたやり直せるという希望。
150年以上生きてきた彼の
心も身体も
その信念によって支えられてきました。

それが崩れてしまう。
アニメ版で一度経験しているとはいっても
というよりもだからこそ、
読むのが怖い回でした。


**********


青空とともに夢に現れるレムは
ヴァッシュに理想を語らせる。
乾ききった砂漠に佇むウルフウッドは
ヴァッシュに現実を突きつける。
レムが命を賭けて護ったものを想うのならば、
レガートですら救わなければならない。
ウルフウッドが命を賭けて護ったものを想うならば、
リヴィオだけは救わなければならない。

もしも人質がリヴィオじゃなかったら、と
考えてみたりします。

ミリメリか、シップの仲間か、その誰でもない一般人か、
こんな風にレガートに人質をとられて、
選んで折れろと突きつけられたなら。
リヴィオが人質だとしても、
ウルフウッドへの想いがこれほど強くなければ。
レガートも見限らずリヴィオも助ける、
そんな方法を考え続けて探し続けて、
見つけることができたのか?
と問うならば
…まだなにかできたんじゃないかと思うのです。
突翼でレガートの動きを制御する
レガート操り糸を全て切断する
エレンディラの身体を粉砕する…
それも一時しのぎかもしれないし、
成功するかどうかもわからい、
リヴィオが縊り殺されるのには間に合わないかもしれない。
でもこれまでのヴァッシュだったら、
それでもギリギリまで粘ったんじゃないかなあ。
僅かな可能性にすべてを賭けて
両方の命をなんとか奪わずにとすむ方法はないかと、
きっと今より足掻いただろう思うのです。

でもヴァッシュは
その時間を惜しんでしまった。
僅かな可能性にかけることができなかった。
ウルフウッドの命がつながるリヴィオを
これ以上危険に晒すことに
耐えられなかった。
ウルフウッドの面影が消えてしまう恐怖に
耐えることができなかったのです。

ヴァッシュの心のありかた、生き方
すべてを揺さぶってしまうほど
ウルフウッドがヴァッシュを変えてしまった。

箱舟を脱出するとき、
たとえ勝ち目がなくとも
この男が命を賭けてくれたから戦えると
エレンディラに答えたヴァッシュを思い出します。
箱舟から落ちたあと、
ウルフウッドに孤児院を頼むと託されたシーン。
自分のしてきた事がすべて無駄になってしまう、と
初めて自分の心のうちを曝けだしたウルフウッドの
初めての願い。
頼むでトンガリ、というその言葉が
ヴァッシュにとってどれほど重かったことか。
ウルフウッドの願いは
ヴァッシュにとって、どうしてもどうしても譲りたくない、護りたい、
特別なものになってしまったのでしょう。
そんなウルフウッドの生き方を無駄にすることなんて
ヴァッシュにできるはずがない。

前月号と今月号とのタイムラグは不明ですが、
ひどく短い時間だったように思います。
いつかおどれにも選ぶ日がくるという言葉と
銃で撃てば人は死ぬという言葉がせめぎあうなかで、
ウルフウッドの姿がヴァッシュの心を覆ったその瞬間、
引鉄をひいてしまった。

今の条件が揃っていなくても、たぶん、アニメと同様に、
ヴァッシュは人質を助けるために
レガートを撃ったと思っています。
物語の流れから、
ヴァッシュはどうしても一度はその手を汚して、
言葉だけではなくて身体で
その罪の重さと痛みを知ることが必要だと思うからです。
でも、結果は同じでも、
ヴァッシュが流した涙の意味は違っていたでしょう。
いまヴァッシュが涙を流していのは
自分が犯した罪の恐ろしさではなくて
ウルフウッドへの想いが溢れているから。
「選ぶ」瞬間、
ウルフウッドに縋ってしまったから。
自分一人で選べずに、
ウルフウッドをも汚してしまったから。

あの日、教会でウルフウッドは
「カラッポなんていうて悪かった」と
そして「笑え」と、ヴァッシュに告げました。
ヴァッシュの生き方を認めてくれた、
そういう一言だったと思います。
自分を信じて許してくれたウルフウッドのそんな気持ちを
裏切ってしまった。
自分の生き方を貫けなかった。
おまえはそのままでいいと言ってくれたのに、
ヴァッシュはウルフウッドの命が繋がるリヴィオを選び、
レガートを見限ってしまった。
自分の中のウルフウッドへの想いから
その引き金を引いてしまいました。

人を殺してしまった罪の恐ろしさが
ヴァッシュを覆っているのはもちろんです。
でも、いちばん胸を締めつけるのは
ウルフウッドを汚してしまったことだと思うのです。
人を殺す、その理由がウルフウッドだなんて、
それはウルフウッドを冒涜することじゃないか。
そのままでいいと言ってくれたウルフウッドがくれた信頼も、
裏切ることになる。
でもそれでもウルフウッドの面影を失いたくない、
彼が護ったものを無駄にしたくない一心で
選んでしまった。

「見限らなければならない」
「選ばなければならない」
その辛さ、その無力感、絶望
そういうものがヴァッシュを叩きのめしています。
お前もこんな気持ちだったのかと流す涙には、
そうやって選んで生きてきたウルフウッドの痛みへの想いと
そんな彼を受けとめられず否定してきた自分への後悔が
とめどなく溢れている。

膝をついたヴァッシュが思いかえす、ひとつひとつのこと。
ウルフウッドの声、仕草、表情。
その言葉。
彼の言葉の本当の意味が
はじめて現実味を持ってヴァッシュに突き刺さる。

ヴァッシュはまた、無知の罪を知ったのでしょう。

ヴァッシュはもうぼろぼろでした。
リヴィオに助けだされなかったら、
あの瓦礫のなかに消えて、
なにもかも無駄になってしまっていたかもしれない。
そんなこと許されないのに、
ついに膝を折ってしまった。


**********


あの頃、彼の言葉を
ヴァッシュはどんな風に聞いていたんだろう。

ウルフウッドが
「選ぶ」ということ、
「殺す」ということを
ただ黙って聞いていたことも、
それは言葉にすぎないと切ったことも、
お前自身はどうなのだと問い返したことも、
怒りにまかせて殴り倒したことも、
それでもありがとうと感謝したこともあった…
護りたいものと、そのためのルールを
けっして譲らない二人。
中盤までは互いを理解せずにぶつかる描写が多くて、
まるで敵対するような関係は
とても魅力的でした。
ずいぶん長い間、平行線のままの二人。
互いの銃の腕だけは信頼しても、
領分を越えない。
それを踏み越えることは
肉体的にも精神的にも死を意味する、
そういう関係でした。
けれど、物語の展開につれて
そんな二人の関係もすこしずつ変わっていきました。
背中を預け、死線をくぐって。
終盤になるとそれぞれのモノローグが
描かれるようになり、
二人の心情が明らかになっていきました。
平行のはずだったラインが少しずつ近づいていく。
特に、あの教会でのラストでは
ウルフウッドの言葉が優しくて、
ようやく何かが解りあえたのだと思っていたのです。
初めの頃の緊張感のある関係ではなくなったけれど、
二人が少しでも通じ合えたことは
やっぱり嬉しかった。

そしていま、初めて、
ウルフウッドの想いを知って涙するヴァッシュ。
ああ、やっぱりすれ違っていたのでした。
そんな甘い関係は見せてくれない。
救われることなどないのでした。

いまようやく、ヴァッシュは
ウルフウッドの軌跡を、
僅かにも知ることができたのでしょうか。
ウルフウッドが
「身内に向けられる銃口は心底 胸が冷えるな」と
初めて知った時のように。
「あいつは言い訳をせえへんかった」と
立ち上がった時のように。


**********


言い訳、という言葉。

ウルフウッドは孤児院の子供たちを護ろうと
手を汚してきました。
「ガキ共のために」、絶対死ねないのだと。
それは孤児院のみんなのせいになるといえるのかな…
ガキどものために生き残る、と
言い訳にしているといえるでしょうか。

あの人のために、ってことは
あの人のせいで、ってことで。
それは表裏一体で、簡単に裏返る。
でもそこに客観的な評価は必要ない。
どちらかの答えを求める人がそれを決めるだけのこと。
自分がどう思っているか、それがすべてじゃないかな。
ウルフウッドが孤児院のみんなのために、と思っているのなら
誰がどう責めても、
世界中の人がそれを違う名前で呼んでも、
たとえ孤児院の子供たち自身がそれを責めたとしても、
ウルフウッドの想いはそのままだと思うのです。
そしてもしもウルフウッドが
こんなに俺の手が汚れているのは
孤児院のせいなのだと一瞬でも思ってしまったら、
その時、彼は本当に
子供たちを殺人の言い訳にする
人間に成り下がってしまうのだと思う。

ウルフウッドが命を落としてしまったのは、
ヴァッシュのせいじゃないと言い切れるかな?
ヴァッシュが殺人を犯してしまったのは、
ウルフウッドのせいってことにならないかな?
そういう疑問というか、不安のようなものが
確かに残ります。

けれど、私は少なくとも、
ウルフウッドが孤児院の子供たちのせいで
殺人者になったと思いたくはないのでした…
それとおなじように、
ヴァッシュがウルフウッドのせいで
罪を犯したと考えたくはないのです。
ヴァッシュがウルフウッドを言い訳にしたと
考えることは
ウルフウッドが孤児院の子供たちを言い訳にしたと
考えることに繋がってしまいそうで。


**********


生きてていいとか悪いとかてめえ勝手に決めるなと、
ドミニク戦でヴァッシュは言いました。

無印を読んでいた頃、アニメを観ていた頃。
どんなに悪人でも殺人者であっても殺してはいけないという
ヴァッシュのことを
天使みたいだなあと思っていました。
もちろんあの天使イラストの影響が大きいんだけど、
超越者というかなあ、
人間ではない生き物だと。
理解できない反発とともに
ありえない理想像への憧れをこめて。

それを「てめえ勝手に」、
ウルフウッドの面影を護りたいという
個人的な感情で、選んでしまった。
命の優劣を決めてしまった。

今まで否定してきたものを自分が犯してしまった
ヴァッシュは、
哀しいことだけれど、
汚れてしまったのだと思います。
人間の業を超越した、
超然としていられるはずのプラントから
唯の、エゴに流される、弱い人間として汚れたんです。

それはヴァッシュが心のなかに
ウルフウッドという特別な存在を持ってしまったから。
数ある命のなかで、特別護りたい、そういう感情を
持ってしまったから。
だからこそ、堕ちてしまった。

そのことをウルフウッドはどう思っているのかなあ…
ウルフウッドはヴァッシュの「なにひとつ見限らない強さ」にこそ
全てを賭けました。
それは失われてしまったんだろうか?

事実として、ヴァッシュは
レガートを「見限って」しまったんだと思います。
彼の翻意を信じて待つことも
彼の動きを封じる程度にすることも、できなかった。
リヴィオの命が危険に晒される。
ウルフウッドの面影が消される恐怖。
その瞬間、ヴァッシュはトリガーを引いてしまった。

「あぶないと思たら ためらいなく引き金をひく」
「ギリギリまで遊んどる余裕はワイにはあらへんのや」

ウルフウッドのその言葉のとおり、
ギリギリまで待つことなく、
一つの命を見限ってしまったヴァッシュ。

「祈りながら 頭に二発、心臓に二発」

でも、ヴァッシュには祈る神すらいないのです

そんなヴァッシュにウルフウッドは失望するのだろうか…


**********


一緒に旅をしていた頃、
ヴァッシュはウルフウッドに「殺すな」と
その信念を押しつけていました。
ウルフウッドの死が
ヴァッシュの不殺の信念に僅かでも傾いたこと、
その生き方に少しでも惹かれたことが
招いたのだとしたら、
ウルフウッドの死はヴァッシュのせいということになります。
これまで「殺すな」と言ってきたことが
ウルフウッドを死に近づけたのだとしたら、
ヴァッシュは決して耐えられないでしょう。

でもウルフウッドのなかで
なにかが変わったことは確かです。
ヴァッシュの不殺を
明確に肯定するわけではないけれど、
無用な殺人はできる限り避けようとしていました。
箱舟から憲兵隊と向き合ったときは
それがとても明確にあらわれていました。
ヴァッシュが傍らにいなくても
足止めで十分だとチャペルやリヴィオをとめようとした。
教会へ戻るときも、雑魚相手に
無駄な殺生をしないように気を遣っていた。
チャペルが不死者の理想論に傾いたのかと嘆いたとき、
ウルフウッドはちがう、と答えたけれど、
でも、言い訳をしないヴァッシュを思い浮かべて、
立ち上がろうとしました。
ウルフウッドはきっと、ずっとずっと、変わりたかった。
ヴァッシュのやり方には反発したけれど、
心のなかでは辛かったんだと思います。
常に「選んで」きたんだもの。

最期、ウルフウッドは笑っていました。
人一倍死を恐れる男。
ヴァッシュに出会わないまま、
ヴァッシュと交わらないままのウルフウッドだったら、
あの最後の共闘はなくて、
そして、リヴィオを引き戻すことなく見捨てていたかもしれない。
あんなラストを迎えることは
できなかったのかもしれない…
ヴァッシュによってなにかが変わったことで
失ったもの、得たもの。
その得たものこそがあのウルフウッドの笑顔を
齎してくれたのではないでしょうか。

「笑えトンガリ」
「カラッポなんて言うて悪かった」

ヴァッシュがその言葉で救われたかといえば
そうではないと思うけれど。
嫌われて理解されないままでいいから、
彼に生きていてほしかったと思うから。
でも、ヴァッシュがまだ隣にいるうちに、
おまえはおまえのままでいいと
伝えることができたウルフウッドは
ある意味、幸せだったと思います。

だってもうウルフウッドはどこにもいなくて、
ヴァッシュの心のなかにしかいなくて、
ヴァッシュはもう何ひとつ、伝えることも答えることも
できないのだから。
「弱虫なんて言って悪かった」なんて
冗談にだって
言葉にすることもできないんだ…


**********


ウルフウッドが「見限らない」ヴァッシュに
賭けたのは事実で、
そしてヴァッシュは
その想いに今までのようには応えられなかった。

いつかお前にも選ぶ日が来る、と
何度も何度も繰り返し説いたウルフウッド。
お前も選ぶ覚悟をしろ、という気持ちだったのは
確かだと思うけれど、
マキシ10巻を読んだあとでは
選ばないで迷い続けろ、とも読めるから、
すこし戸惑います。
でもやっぱり、と思う。

現実時主義の彼だから
きっとヴァッシュが何かを選ぶ日がくると
思っていたのでしょう。
この甘ちゃんの駄々っ子にも
いつかきっと選ぶ日がくる、
戦っていく限りは。
生きていく限りは。
その時、ヴァッシュがどうするか。

ウルフウッドはどうしてほしかったんだろう。

もちろん、孤児院のみんなを頼むと
言い置いていたのだから、
ヴァッシュがリヴィオを選んだことを
ウルフウッドが否定するはずもないんだけれど、
もし人質がリヴィオでなかったとしても、
ヴァッシュが信念を曲げて
レガートを撃ったのならば、
苦い気持ちになったかもしれないけれど、
ヴァッシュにだけは
自分とは違うやり方で、
ギリギリまで迷って誰の命も無駄にしないやり方を
選んでほしかったと思うけれど、

そしてそれが失敗して、
誰かの命が奪われることになったとしても、
ウルフウッドは
ヴァッシュを責めたりはしない…と思う。

できれば同じ辛さを味わってほしくなかったと
思ってくれる、
そういうウルフウッドであってほしい。

「選んでもうたか 次はうまくやり」

って

「そないな顔すな 笑え」

って言ってくれる、
少なくとも私のなかのウルフウッドはそうなのです。

(ウルフウッドに夢見すぎてるのかな。
(でもそれ以外、思い浮かばないもの。

ウルフウッドはヴァッシュを責めたりはしない。
ただヴァッシュが、
ウルフウッドを裏切ってしまったと自分を責めているのです。
ウルフウッドは責めてもくれない。
だからこそ、ヴァッシュはそのぶんだけ
辛いのだけれど。

こんな切迫した状況で
意識を失ってしまったヴァッシュですが
それにはほんとにハラハラするよ。
ここで死んだらなんにもなんないでしょ!!
でも考えてみたら朝、夜、そして朝と丸一日、
極限状態の戦闘で、力を使い切ってしまった。
ほとんど瀕死です。
そこにレガートを撃ったことで
緊張の糸というか精根尽きてしまったということなのかな。
この意識のない表情を見ていると
辛くて辛くてたまらない。
ヴァッシュに休息を与えてほしい。
でも目覚めたとしても地獄しかないのです。
明けない夜はないけれど、
ヴァッシュに覚めない眠りを与えてもあげたい。

築き上げた信念を
後生大事に、縋るようにして歩き続けてきた。
現実の痛みなど知りもしなかった。
自分自身の醜さに気がつきもしなかった。
その辛さに耐えていた人がすぐ隣にいたのに
それを弱いと罵倒した。
けれどその信念は、
自分の弱さに耐え切れずポキリと折れて、
その手を初めて汚した。
何も何も知らなかった。

単純に考えたら、どん底の最低です。
立ち直れるのがおかしいくらい。
このまま目が覚めないほうがどれだけマシか。

でもこれで終わりではなくて、戦いは続いているのです。
気絶したままでもヴァッシュはナイブズに
銃口を向ける。

不殺の信念は自分の手で
打ち砕いてしまった。
でもまだ戦わなくてはならない。
選び続けなければならないのです。
選ぶということの恐ろしさ、苦しさ、後悔を知ったうえで、
また立ち向かわなければなりません。
選べるだろうか?
見限らずに、諦めずに。

今の状況を考えると、マキシ1巻の
あのセリフがまさに当てはまると思います。

人生は絶え間なく連続した問題集
揃って複雑
選択肢は酷薄
加えて制限時間まである

プラントを、人間を、この星を、ナイブズを
どれも失わず見限らない方法を選ぶことができるのか?
そもそもそんな方法自体が存在するのか…
でもヴァッシュは立ち上がって戦うんだと思います。
ミリイは私たちもいる、一人じゃないと言ってくれました。
結局のところ、
最後の戦いに向き合うのは自分一人です。
でもまた立ち上がる。

ウルフウッドはヴァッシュの
桁外れの一途さをこそ信じてくれたのだから。

何度失敗しても
取り返しのつかない過ちを犯しても
それでも諦めないで
希望をみつけようと足掻く、
その姿を信じて賭けてくれたのだから。



結末はどうなるか、まだわかりません。
あの時のアニメと同じ道筋を辿るのか、
原作独自の終わり方があるのか。
カウントダウンが聞こえてはいるけれど、
ナイブズとの最終決戦も、ヴァッシュの自分自身との戦いも
まだこれからなのです。
刮目して待て!
って煽り文句、結構好きですが、
見ていられない見たくないと逃げずに
この物語を見守っていきたいと思います。


**********


えーと、じゃあそろそろこのあたりで
正直者になりまする。







今回は読んでて本当に辛かったんだけれど、
同時にヒアーと悲鳴をあげずにはいられませんでした。
ヴァッシュは本当に本当に
ウルフウッドが大切になっちゃってたんだなあ!!!
正直、それが嬉しいのでした。
ウルフウッドを想うことで
それまでの自分を見失って
大切にしてたものも手放してしまって。
人を好きになることで
だめになってしまうヴァッシュって
それはとてもとてもカワイソウでダメな子で、
もうどうしようもない。
すごく簡単に言えば、
レムよりウルフウッドを選んじゃったんだもん。
もうウルフウッドはどこにもいなくて、
届きもしないのに。
なんてバカな子でしょう。
お前はどんだけウルフウッドが好きなのかっていう。
なにもかもが手遅れの恋だなんて
一体どこの少女漫画これ!!

ヴァッシュが不殺を破ってしまったのは
ウルフウッドのせい、みたいな構図に
なっちゃってるんですけど、
人生の言い訳にしてしまうくらい
ウルフウッドがかけがえない大きな存在なのかと思うと
なんだかすごくドキドキしてしまう。
誰かのために手を汚す、
それは結果的には責められるべきなんだけど、
そんなことしてほしくはないけれど、
でも暗い喜びを覚えてしまうのでした…
あなたのために、という言葉で偽善をつまれるよりも、
ずっとずっと愛されてるよ。
君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなるですかそうですか。
どこか共犯者めいているような、
互いに逃れられない、暗い絆ができてしまったような。
レムのために人を護るヴァッシュ、
ウルフウッドのために人を殺すヴァッシュ。
ここでも「あ、レムを超えた…」と
喜んでしまいました。すみません。

耐えられるはずないじゃないかと呟くヴァッシュの、
あの表情。
ヴァッシュがどれほどウルフウッドのことを想っているのか、
どれほどのものをウルフウッドに持っていかれてしまったのか、
全部ぎゅーって詰まってます。
このヴァッシュを見てると、
もうほんとに胸がいっぱいになってなにも入らない。
そして失神してるヴァッシュの横顔。
ウルフウッドへの後悔と謝罪で濡れているんだな、この瞼の下は
と思うと冷静ではいられません。
少しでも長く眠らせてあげたいな。
ウルフウッドのことを想う闇が長ければいいなあ…

今回のヴァッシュはどれも辛くて、切なくて、どうしようもなくて
見ていて泣けてしまうのも事実なんだけど、
ヴァッシュの表情ひとつひとつに
どうしようもなく見惚れてしまう外道なガノでした。