OURS感想

 2004 1月号

 晴れた青空から
 祝福の紙吹雪が舞いおりてくるなか、
 大切な家族を仰ぎ見ながら
 たった一人の友の隣で
 笑って逝きました。

 よかったね、ウルフウッド。
 ゆっくり休めばいい。
 
   * * * * * * * *

 『楽園』で彼の死を見たとき、憤りしか感じませんでした。
 木の葉のように流されて生きて、
 自分の手で選びとったものはなくて、
 残せたのはヴァッシュに負わせた十字架だけ。
 言うならば犬死にだった。
 
 でも内藤先生はウルフウッドにとても幸せな終わり方を
 与えてくれた。

 夢にまで見た「家」に辿り着いて、
 守りたい者達を取り戻して、見送って。
 友と同じ椅子に座って同じ景色を見て、
 最後の酒を酌み交わして、
 ずっと言えなかった言葉を伝えて。
 血塗れの醜い姿でも
 おかえりなさいと迎えられて。
 神の祝福の鐘の音が聞こえてきて。

 おめでとう。
 ほんとうによかったね。

 最初で最後の涙でようやく
 ただいま、と言えたんだと思う。
 禍々しい断罪の十字架すら
 祝福の雨で清められた。
 最期に見開いた瞳にはきっと
 彼の天国が映っている。

   * * * * * * * *

 「笑え、トンガリ」
 「おまえはやっぱり笑ってる方がええ」
 「カラッポなんていうて悪かった」

 ウルフウッドの残した感謝と謝罪と
 願いは運命よりも残酷。

 笑うことも泣くこともできない。

 彼が神様に祈っているのが哀しかった。
 神に許されないものが願いごとなんて
 「おこがましい」に決まってるのに、
 でもどうかどうかどうか叶えてほしくて
 願ったんだと思うのです。
 きっともう、ただ一度。一生に一度のお願い。

 ―― この男を救ってください。

 死んでほしくないけど、生きていてほしいけど、
 それよりも
 ただただ、「しあわせ」をあげたかったんだと思う。

   * * * * * * * *

 ウルフウッドが死んだのはナイブズのせいじゃなくて
 ニンゲンが愚かだから。
 争い、奪い、貪り、失い、脅え、逃げ、諦め、憎む
 そんな連鎖を断ちきることができないから。
 馬鹿で哀れで救いようがなくて脆い、ちっぽけなもの。

 でもそれでも、かけがえないもの。
 それぞれのどこかにウルフウッドと同じカケラが眠っている。
 ウルフウッドみたいに生きられる。
 まだ遅くないと気がつくことができたら。
 リヴィオができたみたいに。
 
   * * * * * * * *

 仲間を乗せた船のエンジン音が遠ざかり、
 鳥の囀りが聞こえてくる。
 グラスを合わせる透明な音。
 静かで短い会話。
 音もなく降りそそぐ紙吹雪。
 初めて聞く、友の泣き音。
 教会の鐘の音が響く。
 ボトルが転がり落ちる音。
 懸命に声を殺して慟哭に耐える。

 やがて方舟の爆音が空を覆い、全てを飲み込んでしまう。

 逃れようのない運命が容赦なく
 ヴァッシュを迎えに来た。

 隣で眠ってる男を起こさないように、
 静かに一人で
 立ち上がらなくてはならない。
 守りたいもののために。