――――― 背骨が、折れるかと思った。
ガンッと真っ黒い塊が肩に思いっきりぶつかって、ぶつかった勢いを殺さないまま胸に重く圧しかかる。
のけぞる体をかろうじて首だけ支えたけど、体勢を立て直す間もなく抗議などする暇もなく背後に回った長い腕に背がしなるほど抱きしめられた。息が、
止まるほど強く。
――――― 抱き潰されるのかと、思った。
(それはいっそ抱擁というよりも、最大級の攻撃で)
手負いの獣が牙を剥くように。
抱えた爆弾ごと体当たりするように。
(愛とか恋とかよりはむしろ、生とか死とかに似て)
ギリギリ崖ップチで今にも落ちようとする人をつかまえるみたいに。
…今にも、自ら手を離そうとした人を無理矢理逃さないみたいに。
何もかも赦さないと言うように。
(だけどもう右胸に)
傷だらけの皮膚越しに、ぐしゃぐしゃになったコート越しに
よれよれの黒衣越しにお前の鼓動を聞く。近く。近く。
触れるより近く。
口づけるよりもっと近く。
二つ目の心臓。
(きっともう、僕の中にあるから)
放りだしていた腕を持ち上げて
恐る恐る背に這わす。
力をこめて、抱き返す。
肩口で
伏せた男がわずかにみじろいで。吐息が、
子どものように震えて。
――――― このまま呼吸が止まればいいと 願った。
願って、しまった。